東京高等裁判所 昭和34年(う)935号 判決
被告人 菅野勝美
〔抄 録〕
論旨第一点について。
論旨は要するに、本件と同一内容の公訴事実について、さきに杉山サトに対し同人の単独犯として公訴を提起し、裁判所は同人の単独犯として判決をしているのに、同一公訴事実について更に被告人と杉山サトの共同正犯として被告人に対し公訴を提起し、原審がこれを審理判決したのは不法に公訴を受理した違法があるというのであるが、刑事訴訟法第三七八条第二号にいわゆる不法に公訴を受理した場合とは、裁判所が同法第三三八条又は第三三九条によつて公訴棄却の裁判をなすべきに拘らず事件の実体に入り裁判をした場合をいうものと解すべく、そして同法第三三八条第三号に、公訴の提起があつた事件について更に同一裁判所に公訴が提起されたときというのは、いわゆる二重起訴禁止の規定であつて、二重起訴というのは同一人に対し同一公訴事実について二重に公訴を提起した場合をいい、所論のように本件と同一の公訴事実について、さきに杉山サトに対し同人の単独犯として公訴を提起し裁判所が同人の単独犯として判決したとしても、別人である被告人に対する本件公訴につき二重起訴があつたということはできないから論旨は理由がない。
(渡辺辰 関 沖野)